2025年11月28日、東京創元社から一冊の傑作ノンフィクションが刊行されます。その名は『アウシュヴィッツの恋人たち』(ケレン・ブランクフェルド著、杉田七重訳)。アウシュヴィッツ強制収容所という、人類史の中でも最も暗い場所で出会い、恋に落ちた男女の70年にもわたる壮絶な人生の軌跡を描いたこの作品は、アウシュヴィッツ解放から80年という節目を迎える今、私たちが改めて「人間とは何か」「愛とは何か」を深く問い直すための、まさに「今読むべき」一冊です。
アウシュヴィッツ解放80年の今、なぜこの本を読むべきか?
2025年は、第二次世界大戦終結から80年、そしてアウシュヴィッツ強制収容所が解放されてから80年という、歴史的に非常に重要な節目の年です。世界各地では、この記念すべき年に合わせ、ホロコーストを生き延びた元収容者たちが参加する追悼式典が開催され、彼らが発する「二度と過ちを繰り返してはならない」という警鐘は、現代の世界が直面する紛争や差別、排他主義といった問題に対し、改めて深く重いメッセージを投げかけています。
日本でもNHK、朝日新聞、読売新聞をはじめとする各メディアがホロコーストに関する特集や記事を公開し、人々の関心は高まる一方です。このような時代背景の中で刊行される『アウシュヴィッツの恋人たち』は、単なる歴史の記録に留まらず、そこで生きた人々の感情、苦悩、そして奇跡的な愛の物語を通して、私たちに歴史の真実と、その中で育まれた人間の尊厳、そして希望の光を鮮やかに描き出します。
極限状況で芽生えた奇跡の愛:ツィッピとダヴィドの物語
物語の中心となるのは、ツィッピことヘレン・ジポラと、ダヴィド・ヴィスニアという二人のユダヤ人です。ツィッピは23歳で、ダヴィドはわずか16歳で、それぞれ強制収容所へと移送されます。大切な家族を理不尽な暴力によって奪われ、死と隣り合わせの極限状態に置かれながらも、彼らは懸命に生き延びようとします。
- ツィッピ(ヘレン・ジポラ):グラフィックデザイナーとしての才能を持ち、その腕前を活かして収容所内で事務職に就きます。時にはしたたかに、時には助け合いながら、多くの収容者の命を救うため奔走します。彼女の持つ知性と人間性が、絶望的な環境の中で光り輝きます。
- ダヴィド(ダヴィド・ヴィスニア):オペラ歌手を目指していた彼もまた、その音楽の才能を武器に、過酷な環境をなんとか生き延びます。歌声が、多くの人々の心を癒やし、つかの間の希望を与えることもあったでしょう。
何度も死の淵をさまよい、生と死の境界線をさまよう中で、運命は二人を引き合わせます。初めて出会った瞬間、彼らは互いに強く惹かれ合い、瞬く間に恋に落ちます。アウシュヴィッツという場所で「恋」という感情がどれほど危険で、しかしどれほど尊いものだったか。二人は命がけで逢瀬を重ね、互いの存在だけが、希望を失いかけた心をつなぎとめる唯一の光となっていきます。戦況の変化と共に収容所の状況も大きく変わっていく中、二人が辿る運命は一体どうなるのでしょうか?解放後、二人が再会を約した場所へツィッピは向かいますが――。その後の70年間の軌跡が、本書で丹念に描かれています。
人間の尊厳と希望を描く臨場感あふれる描写
本書が傑作と評される所以は、その圧倒的な臨場感にあります。ユダヤ人であるツィッピやダヴィドを取り巻く環境が悪化の一途をたどる緊迫感、強制収容所の筆舌に尽くしがたい残酷な状況、その中で人々が味わった恐怖と絶望、そして奇跡的に芽生える希望の光が、読者の胸に迫る迫力で描かれています。
ケレン・ブランクフェルド氏は、歴史的な大虐殺の真実を、個人の視点から丁寧に紡ぎ出すことで、読者が単なる知識としてではなく、感情を伴って深く理解できるよう導きます。また、本書には貴重な写真や図版が多数収録されており、当時の状況を視覚的に理解する助けとなります。さらに、複雑な歴史的用語も丁寧に解説・翻訳されているため、ホロコーストに関する予備知識が少ない読者でも、安心して読み進めることができるでしょう。
本国でも絶賛!著名作家が語る本書の魅力
『アウシュヴィッツの恋人たち』は、本国アメリカでも既に高い評価を獲得しています。著名な作家たちからも、絶賛の声が寄せられています。
- 「実際に起きたとは信じられない物語だ――だからこそ、この物語は真実でしかありえない。」(ラリー・ロフティス氏/作家)
- 「本書は、人々が生きるためにはどれほど愛するという行為が必要か思い出させてくれる。」(ヘザー・デューン・マカダム氏/作家)
- 「どんなラブストーリーとも違う――心揺さぶられる本書からは、人間の魂は、たとえそこがアウシュヴィッツの地獄であっても、決して滅びることはないと教えられる。」(ジュリア・ボイド氏/作家)
これらの言葉が示すように、本書は単なる悲劇の物語ではなく、その中に人間の持つ根源的な強さ、愛の力、そして決して諦めない魂の輝きが描かれていることがわかります。読後には、深い感動とともに、人間として生きることの意味を深く考えさせられることでしょう。
現代に響く警鐘:ホロコーストから学ぶこと
アウシュヴィッツ解放から80年が経過した今もなお、世界各地では紛争が絶えず、ヘイトスピーチや差別が人々の分断を深めています。ホロコーストという歴史的事実は、私たちに「もしあの時、誰かが行動を起こしていれば」という問いかけを常に突きつけます。『アウシュヴィッツの恋人たち』は、過去に起きた恐ろしい出来事を風化させることなく、そこに生きた人々の声を現代に伝える重要な役割を担っています。
ツィッピとダヴィドの70年にもわたる軌跡を通して、私たちは戦争の悲惨さ、人間の残忍さ、そして同時に、どんな状況下でも失われることのない愛と希望の尊さを学びます。彼らの物語は、私たちに「過去から学び、未来のために行動すること」の重要性を静かに、しかし力強く訴えかけているのです。ホロコーストを生き抜いた生存者たちの「警鐘」が世界中に届けられる今、このノンフィクションは、読者一人ひとりの心に深く響くことでしょう。
かつてそこで起きていたこと、そしてその後の人生を懸命に生きた人々の姿に触れることは、私たち自身の人生を豊かにし、世界を見る目を広げる貴重な経験となるはずです。『アウシュヴィッツの恋人たち』にぜひご注目ください。この秋、あなたの価値観を揺さぶる一冊と出会うことでしょう。
書誌情報と著者・訳者プロフィール
書誌情報
- 書名:アウシュヴィッツの恋人たち
- 著者:ケレン・ブランクフェルド
- 訳者:杉田七重
- 判型:四六判上製
- ページ数:426ページ
- 発売日:2025年11月28日
- 定価:3,850円(税込)
- ISBN:978-4-488-00400-2
- Cコード:C0022
- 写真:David Clapp/Getty Images
- 装幀:中村聡
著者プロフィール
ケレン・ブランクフェルド
ブラジルのサンパウロに生まれ、12歳でテキサス州ヒューストンに移住。祖父母は第二次世界大戦時のヨーロッパからの避難民。タフツ大学、コロンビア大学などで学び、2005年よりジャーナリストとしてニューヨーク・タイムズやフォーブスで活動。2024年に本書を刊行し作家デビュー。
訳者プロフィール
杉田七重(すぎた・ななえ)
東京都生まれ。東京学芸大学卒。英米文学翻訳家。『ヒエログリフを解け』(エドワード・ドルニック)、『海賊たちは黄金を目指す』(キース・トムスン)、『タイガー』(SF・サイード)など訳書多数。
引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000213.000009527.html

