【新刊紹介】写真家・鈴木幹雄が記録した命の記憶──『命の記憶 ─ 沖縄愛楽園1975』(赤々舎)刊行

2025年、写真家・鈴木幹雄氏による記録写真集『命の記憶 ─ 沖縄愛楽園1975』が赤々舎より刊行されました。本書は、ハンセン病療養所である沖縄愛楽園を訪れた若き写真家が、回復者たちの暮らしを丁寧に記録した一冊です。

50年前の沖縄で切り取られた、隔離と共生のリアル

1975年、沖縄県名護市にある国立療養所「沖縄愛楽園」。そこには、ハンセン病回復者が暮らす共同体がありました。当時26歳だった鈴木氏は、本土復帰から間もない沖縄に渡り、愛楽園を訪れました。

カメラを構えることすらためらわれた時代、患者の顔や名前を公にすることは社会的に困難でした。しかし、園内での交流を重ねた末、ある入所者の「これがライ(ハンセン病)よ、撮りなさい」という言葉に背中を押され、鈴木氏は初めてカメラを正面から構えます。

本書には、その時に生まれた肖像と日々の生活の記録が、力強く、そして静かに綴られています。

撮ることの意味を問う、写真家としてのまなざし

『命の記憶』は、単なるドキュメンタリーではありません。そこには「撮る」という行為そのものへの葛藤と対話が深く刻まれています。

「撮っている時には気がつかなかったその人の命の重さが、ずっしりとこたえてくる」と語るように、鈴木氏のレンズは、カメラの向こうにいるひとりひとりの人生に寄り添い、語られることの少なかった記憶を掘り起こしていきます。

収録された日記には、入所者との出会いや交流、撮影に向き合うまでの逡巡が記され、作品の背景をより深く理解する手助けとなっています。

展覧会情報と今後の展開

本書の刊行にあわせ、各地で記念展覧会も開催中です。

沖縄愛楽園交流会館(沖縄・名護)

PURPLE(京都)

TOBICHI(東京・神田)※2025年6月26日(木)より開催開始

さらに、「ほぼ日」では特集記事と著者インタビューの掲載も予定されており、作品の理解を深めるきっかけとして注目が集まっています。

書籍情報

タイトル:命の記憶 ─ 沖縄愛楽園1975

著者:鈴木幹雄

出版社:赤々舎

定価:―(詳細は出版社サイトまたは書店でご確認ください)

発売日:2025年(詳細未確認)

まとめ:50年の時を越えて、今に響く肖像たち

『命の記憶 ─ 沖縄愛楽園1975』は、写真ができること、記録の力、そして人の尊厳とは何かを問いかけてくる貴重な一冊です。50年前の沖縄で切り取られた光景は、今を生きる私たちに静かな問いを投げかけます。

人間の営み、そして「見ること」「伝えること」の本質を見つめ直したいすべての人に、おすすめの一冊です。