人生は、迷い道もまた楽し。『散歩の達人』30周年が教えてくれる、豊かな道のり

先日、私の元に届いたニュースに、心がふわりと温かくなりました。長年にわたり、私たちを未知の路地裏へと誘い、見慣れた街に新たな息吹を与え続けてきた月刊誌『散歩の達人』が、なんと創刊30周年を迎えるというのです。

30年という歳月。それは、一冊の雑誌が歩んできた道のりであると同時に、私たちの多くが人生の様々な局面を経験してきた時間でもあります。このニュースに触れたとき、私はハッとしました。散歩という行為そのものが、私たちの「生きる」ことを考える上で、とてつもなく豊かな示唆を与えてくれるのではないか、と。

「散歩」という名の、人生の歩み

私たちは日々、それぞれの道を歩んでいます。朝、家を出て会社へ向かう道、週末に買い物に出かける道、時には何かに駆られて、あるいは心を落ち着かせたくて、あてもなく歩き続ける道。目的地に向かってまっすぐ進むこともあれば、ふと立ち止まったり、道に迷ったり、時には来た道を戻ることもありますよね。

これって、まるで人生そのものだと思いませんか?『散歩の達人』編集長の平岩美香さんも、「ときに迷いながら、ときに戻りながら、歩かなければ出会えない発見と喜びを探していきたい」と語っていらっしゃいます。人生の道のりも、決して一本道ではありません。成功への最短ルートばかりを追い求めるのではなく、時には迷子になったり、遠回りしたりする時間こそが、私たちをより深く、豊かにしてくれるのではないでしょうか。

たとえば、あの頃思い描いていた夢とは少し違う道を歩いている今。それでも、その道の途中で見つけた小さな花、偶然出会った心温まる人々、予期せぬ喜びの瞬間は、きっとその「迷い道」があったからこそ得られた宝物です。散歩が私たちに教えてくれるのは、そんな人生の多様性、そして一歩一歩の尊さなのかもしれませんね。

見慣れた風景に潜む、新しい私

『散歩の達人』が30年もの間、私たちを魅了し続けてきたのは、「その街にしかないオリジナリティあふれる人、モノ、コト、風景を見つけること」を一番大切にしているからだと言います。私たちもまた、自分の日常という「街」を歩きながら、どれだけ注意深く「私だけのオリジナリティ」を見つけられているでしょうか。

今回の30周年特別企画では、「あの街はどう変わった? プレイバック企画」がスタートするとのこと。これまで紹介してきた街のバックナンバーを振り返り、その変化を辿る企画は、私たち自身の過去を振り返るきっかけにもなりそうです。10年前、20年前の自分は、どんな夢を抱き、どんな場所を歩いていたのでしょう? そして、その時の自分と、今の自分。街の移ろいとともに、私たち自身も少しずつ、でも確実に変化し、成長してきたはずです。

日常の忙しさに追われ、つい見過ごしてしまいがちな日々の変化。でも、少し立ち止まって、じっと目を凝らせば、いつもの景色の中に新しい発見があるはずです。近所にできた新しいお店、季節の移ろいを告げる草花の芽吹き、あるいは、隣を歩く人の何気ない優しさ。それら一つ一つが、私たち自身の心に新しい光を灯してくれるでしょう。

道草が育む、心豊かな時間

今回の特別企画では、「散歩の達人スペシャルメニュー」として、小岩のバーで「散歩」をイメージしたオリジナルジントニック「雨のち 廻り道」が登場するとか。この「廻り道」という言葉に、私は深く共感しました。

効率化が求められる現代において、「廻り道」や「道草」は、時に無駄なものと捉えられがちです。でも、本当にそうでしょうか。急ぐことをやめ、少し立ち止まり、予定にはなかった横道に逸れてみる。そんな「廻り道」の先にこそ、思わぬ感動やひらめきが隠されていることがあります。

カフェで偶然手に取った一冊の本が、人生の転機となることも。いつもと違う道を通ってみたら、素敵な雑貨屋さんに出会えた、なんて経験はありませんか? 立ち止まり、考え、心ゆくまで「道草」をする時間こそが、私たちを癒し、思考を深め、新しい自分に出会わせてくれる豊かな時間なのです。

30年という道のり、そして次の一歩へ

『散歩の達人』が30年という長い道のりを歩んできたことの重み。それは、移り変わる時代の中で、変わらず「歩くことの喜び」を伝え続けてきた証でもあります。私たちの人生もまた、気づけば30年、40年と、たくさんの道草や廻り道を経験してきました。その一つ一つが、今の私たちを形作っているんですよね。

さあ、この春、あなたも自分だけの「散歩の達人」になってみませんか? スマートフォンを片手に、美しい写真スポットを探すのも楽しいけれど、時には何も持たずに、ただ五感を研ぎ澄ませて歩いてみる。風の匂い、鳥の声、道の起伏、足元の石ころ。いつもは見過ごしてしまうような小さな事柄に、心を向けてみるのです。

靴を履き、ドアを開け、一歩外へ踏み出すだけで、きっと新しい「生きる」ヒントが見つかるはずです。そして、その一歩一歩の積み重ねが、あなた自身の30年、40年、そしてその先へと続く、唯一無二の豊かな道のりを作り上げていくでしょう。

 

心に灯をともす、今日の一冊

『ねにもつタイプ』 岸本佐知子 (著)

『散歩の達人』が街のディープな魅力を掘り起こすように、日常のささやかな出来事の中に潜む不思議さや可笑しさ、そして時には切なさを、鋭い観察眼と温かいユーモアで紡ぎ出すのが、岸本佐知子さんのエッセイです。この『ねにもつタイプ』は、まさにそんな岸本さんの魅力が詰まった一冊。

私たちが普段、何気なく通り過ぎてしまうような場面や、心の中でふと抱く感情の機微を、彼女は決して見逃しません。例えば、自動販売機の小銭入れの奥に忘れられた切符、街で出会う奇妙な人々、自分自身のどうにもならない感情……。それら一つ一つに光を当て、独自の視点で深掘りしていく様は、まるで日常という名の散歩道を、岸本さんが最高のキュレーターとして案内してくれているかのようです。

この本を読むと、「ああ、こんな風に世界を見つめることもできるんだ」と、心がフッと軽くなり、同時に知的な好奇心を刺激されます。皆さんも、この本を片手に、ご自身の日常という名の散歩道で、新しい発見を見つけてみませんか? きっと、見慣れた風景が、これまでとは違った輝きを放ち始めるはずです。

引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000130.000050139.html