天川栄人さんの青春小説『ぼくたちの卒業写真』を、書店員の視点から紹介します。2025年6月に文研出版から刊行され、中学生から大人まで幅広く手に取られている一冊です。
この本の基本情報
- 著者:天川栄人 イラスト:くまおり純
- 出版社:新興出版社啓林館(文研出版)
- 発売日:2025年6月11日
- 定価:1,760円(税込)
- 対象:中学生以上(読書感想文の課題にも適しています)
どんな本か(あらすじ)
主人公の蔵木(クラキ)は、「暗すぎクラキ」と呼ばれる、クラスでも控えめな中学生。そんな彼に、学年一の人気者・星野が提案します。「もっと自由に、自分らしい卒業写真を撮ろう」。
星野の実家は卒業アルバムを制作する写真館。蔵木は渋々カメラを構えますが、撮影を進めるうちに一人ひとりの個性が見え始め、次第に他者との本音の交流が生まれていきます。
書店員として読んで感じたこと
この本を手に取ったのは、タイトルの持つ静けさが気になったからです。「卒業写真」というと、誰しも一枚くらい思い当たる「あの瞬間」があります。整列させられて、笑顔を作って、カシャ。それだけのはずなのに、なぜか後から何度も見返してしまう、あの写真。
本書は、その「なぜか」を丁寧にほどいてくれる物語です。
著者の天川栄人さんは、前作『わたしは食べるのが下手』が読書感想文コンクールの課題図書に選ばれるなど、中学生の心情を描く作家として信頼が厚い方。本作でも、「決めつけ」ではなく「本当の理解」というテーマを、難しい言葉を使わずに体現しています。
書店員として正直に言うと、中学生にすすめるのが難しい本は多いのですが、この本は違います。「写真を撮る」という具体的な行動が物語を動かすので、読み始めのハードルが低い。そして読み進めると、自分が誰かにどう見られているか、自分が誰かをどう見ているか、という問いが静かに積み上がっていきます。
読書感想文を書く中学生にも、その子の親御さんにも、届いてほしい一冊です。
こんな人におすすめ
- 読書感想文の本を探している中学生・高校生
- 「写真」「卒業」をテーマにした物語が好きな人
- 繊細な少年の成長を描いた青春小説が好きな人
- 天川栄人さんの前作(『セントエルモの光』シリーズ)が好きな人
- 子どもへの贈り物を探している大人の方
著者・天川栄人さんについて
岡山県出身。京都大学大学院修了。『セントエルモの光』シリーズで日本児童文芸家協会賞を受賞。中学生の内面を繊細に描く作風で定評があります。
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