「犬のうんちとわかりあう」——この本が入荷してきたとき、正直、声に出して笑った。
ミシマ社から届いた段ボールを開けて、そのタイトルを見た瞬間、思わず「なにこれ」とつぶやいてしまった。それが、この本との出会いだった。
そのタイトルに、やられた
本屋の仕事をしていると、毎日何百冊という本が入荷してくる。その中で「手が止まるタイトル」は、本当に少ない。でも「犬のうんちとわかりあう」は確実に手を止めた。いや、止めさせられた。
思わず「これはどこに置くべきか」と一瞬考えた。笑えるコーナーか、犬の本コーナーか、それとも哲学コーナーか——帯を読んで、全部違うとわかった。これはエッセイだ。しかも、かなりまじめな。
著者は、イラストレーターの三好愛さん。書籍の装画や挿絵を数多く手掛けてきたクリエイターが、犬のうんちというきわめて日常的な(そして誰もが「そこまで語らなくていい」と思っている)テーマで、一冊書いた。ミシマ社がこれを出したという事実が、すでに雄弁だ。
「わかりあう」というのは、どういうことか
タイトルをよく見ると、「犬のうんちを処理する」でも「犬のうんちに悩む」でもなく、「わかりあう」だ。
この一語がすごい。「わかりあう」とは、相手と自分のあいだに何かが通じること。つまりこの本は、犬とのあいだで起きる「通じない・通じる・ずれる・ちかづく」という、言葉を持たない生き物との関係を、丁寧に見つめることで生まれたエッセイだということだ。
犬は言葉を話さない。うんちをする理由も、なぜそのタイミングで、なぜそこで、なんて説明してくれない。でも、毎日一緒にいれば、何かが伝わる気がする瞬間がある。その「気がする」の手前で踏みとどまり、でも諦めず、丁寧に書き続けることが、このエッセイの核心なのだと感じた。
書店員として「これは刺さる人がいる」と確信した理由
犬を飼っていない人にも届く
「犬本」「ペット本」として棚に置くと、犬を飼っていない人がスルーしてしまう。でもこの本はそうではない。犬のうんちというモチーフを通じて語られるのは、「わかりあえないもの」との向き合い方だからだ。それは人間同士の関係でも、自分自身との関係でも、同じように起きていることだ。
「見る」プロが書いた文章の解像度
文章だけでなく、「見る」ことを仕事にしてきたイラストレーターが書くエッセイは、視点の解像度が違う。日常の細部に「気づき」があって、それをユーモアを交えながら言語化する手つきが心地いい。ミシマ社の本らしい、丁寧で個性的な一冊だ。
「犬のうんちとわかりあう展」が全国を巡回している意味
この本の刊行を記念した展示が、全国で巡回している。本だけでなく展示になるということは、それだけ「体験として共有したくなる」何かがある本だということ。書店員の勘では、読んだ人が「誰かに渡したくなる」本だと感じる。
こんな人に届いてほしい
- 犬(やネコ、他の動物)と暮らしている人
- 言葉では説明できない「通じた感覚」を信じたい人
- ミシマ社の本、くどうれいんや三好愛さんの読者
- 日常の細部に「おもしろい」を見つけたい人
- 誰かへのプレゼントを探している人(確実に喜ばれる一冊)
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