第175回直木賞候補作5冊を本屋が全力で紹介する|流浪の月・コンビニ人間・かがみの孤城・くもをさがす・52ヘルツのクジラたち

2026年7月15日、第175回直木賞が発表されました。今回の候補作には、本屋大賞や各文学賞ですでに高い評価を得てきた実力作が名を連ねました。受賞発表の熱気が続く今週末こそ、5作を手に取る絶好のタイミングです。

この本屋では小説・エッセイを中心に「読んだあと、人生が少し変わる本」を取り揃えています。書店員の目線で5冊を正直にご紹介します。


①『流浪の月』凪良ゆう(東京創元社)

「誘拐犯と被害者」──社会はふたりをそう呼んだ。でも、更紗と文のあいだに流れた時間は、そんな言葉では語り切れない。

雨の公園で大学生・文に出会った小学生の更紗は、彼の部屋で暮らすことになる。世間の目にはそれが「誘拐」に映った。10年後、それぞれの人生を歩んでいたふたりが再会する。過去の真実が、静かに、しかし確かに問い直される。

普通の外側に立つ人たちの孤独と、それでも差し伸べられる手の温かさ。凪良ゆうの文章は鋭く、なのに優しい。読み終わったあと、更紗と文のことが長い間頭から離れなくなります。2020年本屋大賞受賞。

📖 こんな人に:「世間の目と自分の感覚のズレ」に違和感を覚えたことがある人。善意と悪意の境界を問い直したい人。

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②『コンビニ人間』村田沙耶香(文藝春秋)

36歳、未婚、コンビニアルバイト歴18年。古倉恵子にとって、コンビニの仕事が一番しっくりくる生き方だった。

しかし周囲の目は違う。就職は?結婚は?なぜずっとコンビニ? 社会から「異物」として見られる恵子の視点を通じて、「普通」という概念そのものがじわじわと解体されていく。2016年芥川賞受賞作。

するすると読めるのに、気づけば自分の「普通」観が揺さぶられている。笑いながら読んで、読み終わると少しだけ怖い。そういう一冊です。薄くて短いので一気読みできます。

📖 こんな人に:「普通でいなければ」というプレッシャーを日常的に感じている人。仕事と人生の意味を問い直したい人。

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③『かがみの孤城』辻村深月(ポプラ社)

不登校になった中学生のこころは、ある朝、自室の鏡が光り出すのに気づく。吸い込まれるように入った先は、城の中。そこには自分と似た境遇の7人の子どもたちがいた。

「この城のどこかに、願いを叶える鍵がある」──それぞれの痛みと秘密を抱えた7人は、少しずつ打ち解けていく。2018年本屋大賞受賞。

ファンタジーの外皮をまとった、学校・孤独・家族についての深い物語。子どもが読んでも、大人が読んでも、それぞれの深さで届く。終盤の伏線回収は圧巻で、読み終わったあと思わず声が出ます。この先どうなるのかが気になって眠れなくなる作品です。

📖 こんな人に:かつて「学校が怖かった」記憶がある人。10代の子どもを持つ親御さん。

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④『くもをさがす』西加奈子(河出書房新社)

カナダ在住の小説家・西加奈子が、乳がんの告知を受けてから治療を終えるまでを綴ったノンフィクション。

異国の地で、言葉も医療制度もわからないなかでがんと向き合う。医者との会話、副作用の辛さ、家族への思い、生と死への問い。それでも文章は暗くない。笑いと強さと繊細さが混在している。2023年本屋大賞受賞。

読んでいると、自分の「今」がありありと感じられます。「生きること」を正面から見つめた本で、エッセイと小説の両方を書いてきた西加奈子だからこそ書けた一冊。読了後、空を見上げたくなります。

📖 こんな人に:「生きることの意味」を問い直したい人。西加奈子の小説が好きな人。病気や生死のリアルを正直に語った本を求めている人。

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⑤『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ(中央公論新社)

52ヘルツのクジラとは、ほかのクジラには聞こえない周波数で鳴く、世界でいちばん孤独なクジラのこと。誰かが叫んでいるのに、誰にも届かない声がある。

家族に虐待されてきた少年と、自分の人生を誰かのために使い果たしてきた女性・貴瑚が出会う。「52」と名づけた少年の声なき叫びを聞こうとする貴瑚の姿が、読む者の胸を打つ。2021年本屋大賞受賞。

重いテーマでも、読み終わると不思議と前を向ける。それが町田そのこの筆力です。声をあげられない人たちへの、静かで力強いエール。読んでいる間、ずっと誰かに読んでほしい気持ちになる作品です。

📖 こんな人に:「誰かの声を聞いてあげたい」「自分の声を聞いてほしい」と思ったことがある人。

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この5冊を読むなら今週がラスト

直木賞の発表直後は、候補作への関心が最も高まる時期。1〜2週間後には次のニュースに埋もれてしまいます。本との出会いにも「旬」があります。気になる1冊から、今週のうちに手に取ってみてください。

わたしたちの本屋では、「人生に寄り添う小説・エッセイ」を中心にセレクトしています。今回ご紹介した5冊は順次入荷予定です。入荷のお知らせはこのブログとSNSでお伝えします。

どれを読もうか迷ったら、「今の自分に刺さりそうな紹介文」を選んでみてください。それが本との一番正直な出会い方だと思っています。