なぜ働いていると本が読めなくなるのか【書評・要約】忙しいビジネスパーソンが本を読めない本当の理由を三宅香帆が解き明かす

「週末こそ読もう」と積んでおいた本が、また1冊手付かずで終わった。

仕事から帰ると何もできない。休日はスマホをぼんやり眺めて夕方になる。本が好きだったはずなのに、社会人になってからというもの、まったく読めなくなってしまった——。

そんな経験に心当たりのある人に、強くすすめたい一冊があります。

書評家・三宅香帆氏が2024年4月に刊行した『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)は、「本が読めない」という日常の悩みを出発点に、明治時代から現代に至る日本の労働史と読書文化の変遷を丁寧にたどった意欲作です。発売直後から書店員・読書家・ビジネスパーソンの間で口コミが広がり、2024年を代表する新書の一冊として高い評価を得ました。

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(楽天ブックス / Amazon

本の概要

本書が問うのはシンプルな一つの問い——「なぜ現代人は、働きながら本を読めなくなったのか?」著者はこれを「時間がない」「疲れている」という個人の意志の問題として片付けません。明治期のサラリーマンの誕生から、高度経済成長、バブル期、そして現代の「タイパ至上主義」まで、日本の労働文化の歴史を縦断しながら、読書を阻む構造的な要因を炙り出していきます。

  • 書名:なぜ働いていると本が読めなくなるのか
  • 著者:三宅香帆
  • 出版社:集英社新書
  • 発売日:2024年4月
  • ジャンル:社会・労働・自己啓発

著者紹介:三宅香帆とはどんな人物か

三宅香帆(みやけ・かほ)氏は1994年生まれの書評家・文筆家。京都大学大学院在学中から書評家として活動を始め、文芸・ビジネス・実用書を問わず幅広いジャンルの書評を発表し続けています。著書に『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)などがあり、SNSでも多くのフォロワーを持つ人気書評家です。本書は、三宅氏自身が大学院と社会人を掛け持ちしながら「本が読めなくなった」という実体験から生まれたと言います。

3つの読みどころ

① 「本が読めない」は個人の怠慢ではなく、社会構造の問題だった

多くのビジネスパーソンが「本を読めないのは自分の意志が弱いから」と自己嫌悪に陥りがちです。しかし本書はその前提を根底から覆します。著者が明らかにするのは、全力労働を当然とする日本社会の設計そのものが、読書を阻んでいるという事実です。個人の努力でどうにかなる問題ではなく、歴史的・社会的に形成された構造の問題だと知るだけで、胸のつかえが取れる感覚を覚えるはずです。

② 明治から令和へ——労働と読書の歴史をたどる知的旅行

著者は「サラリーマン」という概念の誕生から始まり、戦後の高度経済成長、バブル崩壊、そして現代のSNSと効率化の時代まで、約150年にわたる日本の労働と読書の関係を丁寧に追います。歴史を知ることで、「今の自分がなぜこうなっているか」が腑に落ちる体験ができます。知識と自己理解が同時に深まる、まさに「知的旅行」と呼ぶにふさわしい読書体験です。

③ 現実的な出口:「半身の働き方」という処方箋

著者は解決策として「半身の働き方」という概念を提案します。仕事と仕事以外の関心を半々に持つ働き方こそが、読書を取り戻し、豊かな人生を送る鍵だと言います。これは「ゆるく働け」という話ではなく、歴史と社会構造の分析から導かれた論理的な提言です。

こんな人におすすめ

  • 「最近、全然本が読めていない」と感じているビジネスパーソン
  • 仕事に追われながらも、もっと知的好奇心を満たしたいと思っている人
  • 読書が好きだったのに、社会人になってから読めなくなった人
  • 日本の労働文化・働き方に疑問や違和感を持っている人
  • 「タイパ」や「効率化」を求める生き方に疲れを感じている人

まとめ

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、身近な悩みを入口に、日本の労働と社会の深部まで連れて行ってくれる一冊です。読後には自分の働き方を見直すヒントだけでなく、「こんなに面白い切り口があるのか」という知的興奮も味わえます。ビジネス書・自己啓発書の枠を超えた、現代日本のビジネスパーソン必読の新書と言えるでしょう。

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