こんにちは、私の大切な読者の皆さま。雪降る北の大地から、新しい年の幕開けとともに、心に深く響く展覧会の便りが届きました。劇作家・市原佐都子さんの初の展覧会『肉の上を粘菌は通った』。このタイトルを目にしただけで、ゾクゾクするような、それでいてどこか優しく、私たちの身体や生命について深く問いかけてくる予感に満たされます。
忙しい毎日の中で、私たちはどれだけ「生きる」ことについて、じっくりと思いを巡らせているでしょうか。今日食べるもの、今日会う人、今日すること……目の前のタスクに追われ、ふと立ち止まって、自分という存在、そしてその先の未来に広がる生命について考える時間を持つことは、なかなか難しいものかもしれません。
でも、この展覧会は、そんな私たちに、そっと、それでいて力強く語りかけてくれるようです。「あなたの身体は、あなたの生命は、今、ここに、どのように存在しているのか?」と。
未来を織りなす「プレコンセプションケア」という対話
展覧会の着想源の一つとなっているのが、「プレコンセプションケア」という言葉です。耳慣れない方もいらっしゃるかもしれませんね。これは、将来の妊娠・出産を考慮に入れて、今の自分の健康状態を確認したり、生活習慣を見直したりすることで、ライフステージやライフプランに応じた健康づくりを考えるという、とても大切な視点です。
WHO(世界保健機関)も推奨しているこの考え方は、決して「子どもを産むこと」だけを指すのではありません。30代、40代、そして50代と、多様なライフステージを生きる私たち一人ひとりが、自分自身の身体と心に意識を向け、より健やかに、自分らしく生きていくための「未来への投資」のようなものだと、私は感じています。
例えば、日々の食生活はどうでしょう。心の健康は保てているでしょうか。ストレスとの向き合い方は? これらは全て、私たちの身体と心、そしてその先に続く可能性を育む大切な要素です。プレコンセプションケアは、私たち女性が、自分自身の身体を「未来への器」として大切に思い、労わること。そして、パートナーシップや家族との関係性、さらに社会全体で「いのち」を支え合うことについて考える、豊かな対話の機会を与えてくれるのではないでしょうか。
「自分はどう生きたいのか」「どんな未来を望むのか」——そうした問いかけは、時に私たちを不安にさせることもあるかもしれません。でも、この展覧会は、その問いに、アートと科学という異なるレンズを通して、新しい光を当ててくれるはずです。
粘菌とAIが紡ぐ、生命の多様な物語
市原佐都子さんは、この「プレコンセプションケア」というテーマを深く掘り下げる中で、驚くべきモチーフに出合います。それが「粘菌」と「AI」。
粘菌。ご存知でしょうか? 森の中でひっそりと生きる、アメーバのように動き回る単細胞生物です。時に美しい網目模様を作り、迷路を解き、知的な行動を見せる彼らは、私たち人間とは全く異なる、しかし紛れもない「生命」の形を示しています。
そしてAI。人間が生み出した、新たな「知性」の形。市原さんは、自ら開発したAIと協働して作品を制作されているアーティスト・岸裕真さんを迎え、人間ではない知性と生命のあり方を探求します。
人間だけが特別な存在だという思い込みを、そっと揺さぶられるような感覚に包まれませんか? 粘菌のようなミクロな生命から、AIというマクロな知性まで。生命の広がり、知性の多様性を目の当たりにすることで、私たちは、自分たち人間が「生きる」ことの持つ意味を、より広い視野で捉え直すことができるでしょう。
私たちの身体の中にも、数えきれないほどの微生物が共生しています。体全体が「生命」の複雑な生態系。そう考えると、粘菌やAIとの出会いは、私たち自身の身体、そして「私」という生命の根源に立ち返る、瞑想のような体験になるかもしれません。
アートとサイエンスが交差する、知的な感動の旅
この展覧会は、アートとサイエンスという、一見すると異なる分野が深く連携し、私たちに新しい視点をもたらしてくれる点が魅力です。北海道大学の研究者たちとの共同リサーチ、そしてAIアーティストとの協働。それはまさに、知識と感性が織りなす、壮大な実験の場。
科学的な知見がアートの表現によって可視化され、私たちの感情や思考に深く訴えかける。そして、アートが投げかける問いが、さらに科学的な探求へと私たちを誘う。この循環こそが、私たちが「生きる」ことの意味を多角的に、そして豊かに捉える手助けをしてくれるのだと思います。
私たちは、とかく二元論で物事を捉えがちです。生と死、心と体、理性と感情。でも、粘菌が形を変えながら生きるように、AIが新たな知性を生み出すように、私たちの「生きる」という行為もまた、固定されたものではなく、常に変化し、揺らぎ、様々な要素が混じり合って成り立っているのではないでしょうか。
この展覧会は、そんな複雑で美しい「生きる」の様相を、肌で感じ、頭で考え、心で受け止める、またとない機会となるでしょう。
日常に持ち帰る、「生きる」という問いの輝き
展覧会を訪れた後、私たちはきっと、今までとは違う目で世界を見るようになっているはずです。道端の小さな苔や、空に漂う雲、そして何より、自分自身の身体と心に、これまで以上の意識を向けるようになるかもしれません。
「生きる」ということは、日々の中に散りばめられた小さな選択の連続です。そして、その選択の一つ一つが、私たちの未来を、そしてその先の生命の営みを形作っていきます。
市原佐都子さんの問いかけは、私たち一人ひとりの心に、静かに、しかし力強く灯をともしてくれるでしょう。それは、私たちの身体を慈しみ、未来の可能性を信じ、そして地球上のあらゆる生命と共生していくことの尊さを再認識させてくれる光となるはずです。
ぜひ、この機会に、札幌文化芸術交流センターSCARTSへ足を運んでみませんか。そして、アートとサイエンスが織りなす、生命の壮大な物語の中で、あなた自身の「生きる」という問いに、新たな答えを見つけてください。
きっと、豊かな発見と、未来への優しい希望が、あなたを待っていますから。
心に灯をともす、今日の一冊
今回、皆さまにご紹介したいのは、生物学者・福岡伸一さんの名著『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』です。
私たちの身体は、毎日、絶え間なく細胞が生まれ変わり、分解と合成を繰り返しています。まさに「流れ続ける水」のように、常に変化し続けている。この生命の神秘を「動的平衡」という概念で、詩的に、そして科学的に解き明かしてくれる一冊です。
市原佐都子さんの展覧会が「プレコンセプションケア」や「粘菌」「AI」を通して、私たちの身体や生命のあり方を多角的に問いかけるように、この本もまた、生命が持つ根源的な不思議さ、そして私たち人間が「生きる」という営みそのものの奥深さを教えてくれます。
固定された「私」という存在ではなく、常に変化し、揺らぎながらも、確かにそこにある生命の輝き。この本を読み解くことで、展覧会で感じたアートとサイエンスの融合が、さらに深く、知的な感動へと繋がっていくことでしょう。ご自身の身体と心の声に耳を傾け、生命の絶え間ない営みに思いを馳せる、そんな豊かな時間をもたらしてくれるはずです。ぜひ、手に取ってみてください。
引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000037.000106727.html

