元チャットモンチーのドラマーであり作詞家でもある高橋久美子さんが、愛媛の実家の畑を仲間と耕しながら書いた農業エッセイ『わたしの農継ぎ』(ミシマ社)。専業農家でもなければ、ただの週末菜園でもない「自分が食べる分+α」の農業と、東京での執筆仕事を行き来する3年間の記録です。獣害、異常気象、人間関係の迷い――きれいごとだけでは終わらないリアルな奮闘が、音楽家らしい言葉のリズムで綴られています。
高橋久美子ってどんな人?
1982年、愛媛県生まれ。ロックバンド「チャットモンチー」のドラマー兼作詞担当として2004年から2011年まで活動し、解散後は作家・詩人・作詞家として本格的に文筆活動へ軸を移しました。エッセイ・小説・詩・絵本と幅広く手がけながら、現在は愛媛の実家と東京を1カ月交代で往来する二拠点生活を5年以上続けています。音楽でビートを刻んできた人だからこそ、畑仕事という身体を使う営みへの言葉の落とし込み方がどこか音楽的で、読みやすいのが本書の特徴です。
『わたしの農継ぎ』はどんな本?
前著『その農地、私が買います』で実家近くの遊休農地を買い取ってから3年。本書はその後も仲間たちと農業を続けながら、草・猿・猪・モグラといった自然との攻防や、人間関係の迷いも含めて「農業の厳しさ」に正面から向き合った記録です。2019年冬に近隣の遊休農地で仲間と農業を始め、専業農家を目指すのではなく「自分が食べる分+α」を実践する――という、都会暮らしの人にも実家の畑を持つ人にも開かれた、新しい農との関わり方を提示しています。
著者自身、インタビューでは異常気象によってみかんの収穫が例年の10分の1まで落ち込んだ年のことや、山の管理不足による獣害の深刻化についても語っており、本書はのどかな田舎暮らし賛歌ではなく、気候変動や過疎地の獣害問題という現実を生活者の視点から描いた記録でもあります。
読みどころ3つ
①「畑は人間が生き物の根源に戻れる場所」という気づき
著者はインタビューで「自分も自然の中の流れの一つなんだな」と思えるようになったと語っています。音楽と文筆で言葉を扱ってきた人が、言葉の通じない自然相手に四苦八苦する過程そのものが本書の読みどころです。
②専業でも週末菜園でもない「+αの農継ぎ」という第三の道
実家の畑をどうするか悩んでいる人、地方と都会の二拠点生活に関心がある人にとって、「全部やるか、全部諦めるか」以外の選択肢を見せてくれます。
③獣害・異常気象という”きれいごとでは終わらない”現実
猿・猪・モグラとの攻防や、収穫が10分の1に落ち込んだ年の記録など、地方の農地が抱える構造的な課題が生活者の言葉で記されています。
どんな人におすすめ?
- 実家の畑・田んぼをどうするか迷っている人
- 地方と都会の二拠点生活に興味がある人
- 元チャットモンチーのファン、高橋久美子さんの文筆仕事を追っている人
- 気候変動・獣害など、地方の農業が今向き合っている現実を知りたい人
のこのこ書店より
のこのこ書店では『わたしの農継ぎ』の実庫を2冊ご用意しています(在庫状況は変動するため、確実な在庫確認はお問い合わせください)。熊野・東紀州という土地で本屋と古道の本づくり(千年の栞)を営む私たちにとって、「地方で何かを継ぐ」という本書のテーマは人ごとではありません。迷っている方にそっと手渡したい一冊です。
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