農家の本棚──のこのこが秋に選ぶ5冊

農業をやっていると、本を読む時間が変わります。

春と夏は体が忙しい。草を刈って、水を引いて、虫と格闘している間に日が暮れる。でも秋になると、少しだけ時間が戻ってくる。収穫が始まって、野菜を段ボールに詰めながら「今夜は本を読もう」と思う日が増えてくる。

のこのこ書店は、農業もやっている本屋です。島根で野菜を育てながら本を売っている。変な組み合わせかもしれないけれど、土を触る日と、本をめくる日が同じ暮らしの中にあるのは、私たちにとってごく自然なことです。

農家が読む本は、農業の本とは限りません。土や季節の近くで読むと、ぐっと染み込んでくる本がある。今年の秋、私たちが選んだ5冊を紹介します。


1冊目:高橋久美子『わたしの農継ぎ』

詩人の高橋久美子さんが、家の農業を継ぐ経験を書いたエッセイです。

「継ぐ」という動詞がこんなに重いとは思っていなかった。土を耕すことと、言葉を書くことが、この本の中でゆっくりと交差していきます。農業をやっている人間が読むと、どこかで「あ、そうか」と立ち止まる瞬間がある。

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2冊目:光嶋裕介・青木真兵『つくる人になるために』

建築家と在野の哲学者が語る、「つくる」ということ。

手を動かすことが、考えることだった──そういう感覚が農業にはあります。種をまく判断、水をやるタイミング、収穫の見極め。頭で考えるより先に、体が覚えていることがある。この本はその感覚に言葉をくれる一冊です。

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3冊目:松村圭一郎『小さき者たちの』

人類学者の松村圭一郎さんが、「大きな声に消されてきた人たちの話」を聞き続けた記録。

農業は規模が大きくない。目立たない。統計の端っこにある仕事です。でも土を耕して食べ物をつくることの確かさは、どんな大きな話にも負けない。この本を読みながら、自分たちのやっていることを小さいと思わなくていいのかもしれないと感じた。

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4冊目:中島岳志『思いがけず利他』

「利他」とは何か、をていねいに問い直す本。

農業をやっていると、自分のためだけに野菜を育てているのではないと感じる場面がある。食べる人の顔が見えるとき、「届けたい」という気持ちが「売りたい」より先に来ることがある。この本はその感覚の正体に近いものを語っています。

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5冊目:くどうれいん『桃を煮るひと』

詩人・くどうれいんのエッセイ集。桃を煮る、という小さな行為の話から始まります。

農業と食は、土台でつながっています。桃を煮ることは、桃を育てた人の時間と接触することです。この本を読んでいると、自分たちが育てた野菜を受け取ってくれた人が、どんな食卓に置いてくれているかを想像したくなります。

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のこのこ書店について

のこのこ書店は、島根で農業をやりながら本を売っています。在庫はすべてオーナーが実際に読んで「これを届けたい」と思った本だけ。大型書店では目立たない独立系出版社の本が中心です。

農産物と本を一緒にお届けする「晴耕雨読セット」も販売予定です。次回販売のお知らせはXでお伝えします。

のこのこ書店オンラインストア(Yahoo!ショッピング)→