「フェミニズム」という言葉を聞いたとき、どんな気持ちになるだろうか。
むずかしそう。難しい理論の話。声高に主張する人たちのもの。若い世代のためのもの。自分には関係ない——そんなふうに感じてきた人も、きっと少なくないと思う。かくいう私自身も、長いあいだそのひとりだった。
和田靜香の『50代でフェミニズムを知る 身近な政治と安心して暮らす方法』は、そのハードルをひとつひとつ丁寧に外していく一冊だ。
タイトルに「50代で」とある。これは「50代になってから知った」という著者自身の実体験から来ている。遅いとか、今さらとか、そういうことではなく、50代というリアルな地点から正直に「知っていくプロセス」を書いた本だということだ。その正直さが、すでにこの本の核心を物語っている。
「身近な政治」と「安心して暮らすこと」がつながっている
副題は「身近な政治と安心して暮らす方法」。
フェミニズムと政治が同じ文脈で語られると、なんだか重い話になりそうに見えるかもしれない。でも、和田靜香が書くのは「大きな運動の話」ではなく、「自分の日常と安心」の話だ。
政治は選挙の日だけの出来事ではない。賃金、医療、介護、家事、育児、老後の保障——私たちの生活のあらゆる場面が、「政治的な決定」と地続きになっている。フェミニズムはその構造を見えやすくする「レンズ」のようなものだ。
そのレンズを手に入れることで、なぜ自分がこんなに生きにくいのか、なぜこんなに疲れているのか、なぜ声を上げると「大げさ」と言われるのかが、少しずつ言語化できるようになる。それは単なる知識の習得ではなく、自分の経験に言葉が与えられる体験でもある。
著者・和田靜香について
和田靜香は、音楽ライター・コラムニストとして活動しながら、政治参加への関心を深めてきた書き手だ。専門家ではなく「ひとりの市民・生活者」として書かれた文章は、フェミニズムの教科書とは違う温度感がある。
「知らなかった自分」を隠さず、発見の過程をそのまま書くスタイルは、同じように「今さらフェミニズムを読んでも」と感じている読者の背中をそっと押してくれる。
フェミニズムについて書かれた本の多くは、歴史的背景や理論的な枠組みから入るものが多い。それはそれで重要だが、まずは「自分の話として受け取れるか」が読み続けられるかどうかの分かれ目でもある。和田靜香の書き方は、その入口の低さが際立っている。
「遅すぎる」なんてことはない
この本がとりわけ響くのは、フェミニズムを「若い世代のもの」「自分とは遠い何か」だと感じてきた人かもしれない。
SNSで激しく議論されているのを遠くから眺めてきた人。どこから入っていいかわからなかった人。「私はフェミニストなのかどうかもわからない」という人。
でも、50代で「知る」ことに遅すぎるということはない。むしろ、人生のいくつかの局面を経験し、職場や家庭で「なんかおかしい」と感じながらも言葉にできなかった経験がある分、フェミニズムの視点が「腑に落ちる」体験になることがある。
著者が50代で手にしたという発見の感覚は、同年代の読者だけでなく、30代・40代の読者にとっても共鳴する部分が多いはずだ。年齢という切り口が、むしろ多くの世代の読者を引き寄せる。
こんな人に手に取ってほしい
- 「フェミニズム」に興味はあるが、どこから始めればいいかわからない
- 日常の生きにくさや理不尽さに、言葉がほしいと感じている
- 政治を「遠いもの」として感じてきたが、変えたいと思っている
- 50代前後で、人生の後半戦の在り方を改めて考えはじめている
- 和田靜香の文章が好きで、新しい一冊を探している
- 家族や友人との会話で「どう言えばよかったんだろう」と後から悩むことがある
難しい理論書ではなく、一人の人間が「知っていくプロセス」をリアルに書いた本だからこそ、読み始めるハードルが低い。フェミニズムへの最初の一冊としても、一度遠ざかってしまった人の再入門の一冊としても機能する。
「安心して暮らす方法」という言葉の重さ
副題にある「安心して暮らす方法」という言葉が、読めば読むほど効いてくる。
フェミニズムは何かを「批判する」ためだけにあるのではなく、「安心できる社会をつくる」ための視点でもある。誰かを攻撃するためではなく、自分が安心して生きられる場所を考えるための道具として。
そのフレームが、この本の一番大きな贈り物かもしれない。
読み終えたあと、世界の見え方が少し変わる。自分がこれまで感じてきたモヤモヤに、言葉という形が与えられる。そういう本だと思う。
当店在庫情報
『50代でフェミニズムを知る 身近な政治と安心して暮らす方法』(著:和田靜香)は、現在当店に在庫がございます。社会・ジェンダー論に関心のある方、和田靜香さんのファンの方、ぜひお手に取ってみてください。オンラインショップからもご購入いただけます。
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