キッチンから漂う、どこか懐かしい香り。それは、お味噌汁の出汁だったり、焼きたてのパンの香りだったり、あるいは、焦がし醤油の香ばしさかもしれません。私たちの日々の食卓には、単なる栄養補給以上の、温かい記憶と、誰かの愛情が宿っています。とりわけ「母の味」と聞けば、多くの人が心の中に、優しく、そして時には切なく、かけがえのない思い出を呼び覚ますのではないでしょうか。
食卓の記憶が教えてくれる、見えない愛情の形
「この味、お母さんがよく作ってくれたわね」と、ふとした瞬間に思い出すあの料理。それは、時に私たちの原点に立ち返らせ、生きる上で大切な何かをそっと教えてくれる道標のようです。食卓を囲む時間、料理を作る人の手から伝わる温もり、そしてその味に込められたメッセージ。それらは目には見えなくとも、私たちの心に深く刻まれ、人生を支えるかけがえのない力となります。
特に子育て中のママや、かつて母の手料理で育った私たちにとって、食は愛情そのもの。忙しい日々の中で、完璧な料理は作れなくとも、「誰かのために」という想いこそが、食卓を豊かに彩る一番のスパイスではないでしょうか。
「もしもキッチンに立てたなら」……希望を紡ぐ、いのちのレシピ
今回、私が皆さんと分かち合いたい一冊は、まさにそんな「食と愛」の深遠なテーマを、私たちに優しく問いかけてくれる作品です。難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断された一人の女性、はらだまさこさんが綴ったエッセイ&レシピ集『もしもキッチンに立てたなら 難病ALSのママが綴るいのちのレシピ』。
まさこさんは、4歳と12歳のお子さんを持つシェフであり、かつてはオーガニック喫茶店を営んでいらっしゃいました。しかし、進行性の難病であるALSによって、徐々に手足が動かせなくなり、愛するキッチンに立つことすら困難な状況に直面されています。シェフとして、母として、どれほどの葛藤や無念さがあったことでしょう。想像するだけで、胸が締め付けられる思いがします。
「できない」の中で見つける、「できること」の輝き
「子どもたちに”母の味”を残したい」。この切なる願いこそが、まさこさんを突き動かす原動力となりました。料理を振る舞えない悔しさに涙しながらも、まさこさんは立ち止まりません。「できない中のできることって何だろう」。その問いかけから生まれたのが、この一冊です。
ご自身の喫茶店の人気メニュー「鉄板ナポリタン」や、旅先で出会った「青唐辛子のグリーンカレー」、そして「子どもたちにいつか作ってあげたいお弁当」――。17品ものレシピには、ひとつひとつに家族への深い愛情と、静かながらも力強い未来への希望が込められています。
不自由な手で、一つ一つ丁寧に書き綴られたレシピは、単なる調理法ではありません。それは、まさこさんの記憶であり、子どもたちへのメッセージであり、そして何よりも「生きる」ことへの真摯な証なのです。困難な状況にあっても、希望を捨てず、できることを探し、形にしていくまさこさんの姿は、私たちに大きな勇気を与えてくれます。
レシピは、未来へのバトン。そして、生きる意味を考えるヒント
この本は、料理が好きな人や、家族を大切に思うすべての人に届けたい一冊です。私たちは日々の忙しさの中で、目の前にある「当たり前」の尊さを見失いがちです。しかし、まさこさんの物語は、食事を作れること、誰かと食卓を囲めること、そして今日という一日を生きられることの奇跡を、改めて私たちに教えてくれます。
「母の味」は、単なる懐かしさだけでなく、親から子へ、そして次世代へと受け継がれる「愛」という名のバトンです。まさこさんのレシピは、そのバトンを未来へ繋ぎたいという強い想いで満ちています。それは、私たち一人ひとりが、自分の人生の中で何を大切にし、何を未来に残していきたいのかを考える、大切なきっかけを与えてくれるでしょう。
「生きる」とは、困難に直面しながらも、その中に小さな光を見つけ出し、希望を抱き続けることなのかもしれません。この本を開けば、きっとあなたの心にも、温かい希望の灯がともるはずです。
心に灯をともす、今日の一冊
『もしもキッチンに立てたなら 難病ALSのママが綴るいのちのレシピ』
著者:はらだまさこ
私がこの本をおすすめする理由は、まさに「生きるを考える」というテーマに、これほど真摯に向き合い、そして希望に満ちたメッセージを私たちに届けてくれる本は他にないと感じたからです。難病という途方もない困難に直面しながらも、母として、シェフとして、そして一人の人間として、前を向いて生きるまさこさんの姿は、私たちに深い感動と、生きる上での大切なヒントを与えてくれます。
この本は、決して悲しい物語ではありません。むしろ、愛と希望に満ちています。日々の忙しさの中で、あるいは人生の岐路に立たされた時、この一冊が、あなたにとっての「心の栄養」となることを願っています。食卓を囲む喜び、家族の温かさ、そして何よりも、今日という一日を大切に生きる意味を、きっとあなたも再発見するでしょう。
引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000990.000016935.html

