三浦しをんは2006年に『まほろ駅前多田便利軒』で第135回直木賞を受賞し、2012年には『舟を編む』で本屋大賞を受賞した、直木賞・本屋大賞の両方を獲った数少ない作家のひとり。代表作の多くが映画化・アニメ化・ドラマ化されている「映像化率の高さ」も特徴で、この記事では書店員の視点で三浦しをんの代表作を「どれから読むか」で整理する。
まず1冊だけ読むなら:『まほろ駅前多田便利軒』
まほろ駅前多田便利軒(文春文庫)は2006年刊、同年に第135回直木賞を受賞した作品。東京郊外の町「まほろ市」で便利屋を営む多田と、高校の同級生で居候することになった行天との凸凹コンビが、様々な依頼人の事情に関わっていく連作小説。会話のテンポの良さとユーモア、その奥にある登場人物たちの痛みの描き方が三浦しをんらしさの入門として最適で、2011年4月には瑛太主演・瀬々敬久監督で映画化もされている。
2冊目:『舟を編む』──本屋大賞受賞・映画化・アニメ化・NHKドラマ化の最大代表作
舟を編む(光文社文庫)は2011年刊。出版社の辞書編集部に配属された不器用な青年・馬締光也が、新しい国語辞典『大渡海』の完成を目指し仲間たちと十数年をかけて向き合う物語。2012年に本屋大賞を受賞し、2013年4月には石井裕也監督・松田龍平主演で映画化、2016年10月にはノイタミナ枠でTVアニメ化、さらに2024年2月にはNHK BSプレミアムでドラマ化もされた、三浦しをん作品の中でも最も多く映像化された代表作。「言葉を編む」という地味なテーマを熱く描く筆致は、三浦しをんの真骨頂と言える1冊。
3冊目:『風が強く吹いている』──箱根駅伝を舞台にした青春小説・TVアニメ化
風が強く吹いている(新潮文庫)は2006年刊。陸上経験者が1人しかいない寛政大学の竹青荘に、天才ランナー・蔵原走がやってくるところから始まる箱根駅伝青春小説。チームスポーツとしての駅伝の面白さと、登場人物それぞれの過去や葛藤を丁寧に描く群像劇で、2018年10月にはProduction I.G制作でTVアニメ化された。走ることに迷いながらも前に進む青春小説を読みたい人におすすめの1冊。
4冊目:『まほろ駅前番外地』──多田便利軒シリーズのスピンオフ短編集
まほろ駅前番外地(文春文庫)は『まほろ駅前多田便利軒』の続編にあたる短編集。多田・行天の物語に加え、曾根田のばあちゃんの若き日のロマンスを描く「思い出の銀幕」や、岡老人の細君の視点で描かれる「岡夫人は観察する」など、本編では描かれなかった脇役たちの物語がスピンオフ的に収録されている。まほろ駅前シリーズは本作の後、完結篇『まほろ駅前狂騒曲』へと続く。
読む順番まとめ
- 初めての1冊:まほろ駅前多田便利軒(直木賞受賞・コンビ小説で読みやすい)
- 代表作から辿るなら:まほろ駅前多田便利軒 → 舟を編む(本屋大賞・映画/アニメ/ドラマ化) → 風が強く吹いている(TVアニメ化) → まほろ駅前番外地(スピンオフでもっと読みたい人向け)
三浦しをんの作品は「不器用な人間同士の関わり」を軸にしたものが多く、便利屋・辞書編集部・駅伝部とどの舞台を選んでも入りやすいのが魅力。まずは直木賞受賞作『まほろ駅前多田便利軒』、あるいは最大の代表作『舟を編む』から読んでみてほしい。
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