日常にそっと寄り添う、名もなき文化たちの声
ねぇ、突然ですが、あなたの心の奥底に、ふとした時に温かい光を灯してくれる「あの頃の歌」や「あのドラマのセリフ」はありますか?
私たち女性は、日々、仕事や家事、子育て、人間関係…と、たくさんの役割をこなし、時に息苦しさを感じてしまうことがありますよね。そんな時、そっと心の隙間を埋めてくれるのは、派手なイベントや高尚な芸術作品だけではないと、私はいつも感じています。むしろ、何の気なしに口ずさんだ歌謡曲のメロディーや、夕飯の支度をしながら耳にしたテレビドラマの主題歌、あるいは幼い頃に夢中になった漫画のキャラクター……そんな、いわゆる「大衆文化」と呼ばれるものたちが、気づけば私たちの「生きるよすが」となって、心を支えてくれていたのではないでしょうか。
先日、とても心惹かれるニュースを耳にしました。あの懐かしい解熱鎮痛薬「ケロリン」が発売100周年を記念して、大衆文化研究に特化した「ケロリンBOOKS」という新しい出版レーベルを創刊するというのです。一見すると「ケロリン」と「大衆文化」が結びつかないように思えるかもしれませんが、実は「ケロリン」そのものが、大正モダニズムのパッケージデザインやCMソング、そして今も愛されるケロリン桶など、まさに日本の大衆文化史を彩る存在だったと知って、深く頷きました。
この「ケロリンBOOKS」の創刊が教えてくれるのは、「大衆とともに歩んだ100年」という歴史の深みだけではありません。私たちが見過ごしがちな、あるいは「当たり前」すぎて意識しないような日常の片隅にこそ、心を豊かにする「生きるヒント」が隠されているのだ、という大切なメッセージだと私は受け止めました。
「偏愛」が織りなす、私だけの心の宝物
「ケロリンBOOKS」のプレスリリースには、特に印象的な言葉がありました。「大衆文化は時代を華やかに彩り、多くの人々にとって生きるよすがともなってきました。その一方で、どれほど大衆からの喝采を受けようとも、『芸術的正統性』や『社会的有用性』が認められなければ通史に記述されません」。そして、「公平さよりも『偏愛』にみちた企画を大切にしていきます」と。
この「偏愛」という言葉に、私は深く共感しました。流行の最先端を行くようなものだけでなく、誰かにとってはただの懐かしい記憶でも、私たち一人ひとりにとっては、かけがえのない宝物があるはずです。例えば、幼い頃に母と見たホームドラマ、青春時代に何度も聴いたあのバンドの曲、初めて触れた少女漫画の世界…。それは、その時の感情や時代背景と分かちがたく結びつき、私たちの人格形成にまで影響を与えてきた、私だけの「偏愛の対象」です。
そして、そうした「偏愛」は、時に私たち自身の「生き方」を映し出す鏡にもなります。なぜ、あの頃、私はあのドラマに夢中になったのだろう? なぜ、あの曲を聴くと涙が止まらないのだろう? その理由を辿っていくと、当時の自分の悩みや喜び、そして今へと続く価値観の萌芽を見つけ出すことができるかもしれません。大衆文化に光を当てることは、単に過去を記録するだけでなく、今を生きる私たちの内面を深く掘り下げ、自己理解を深めることにも繋がるのだと、私は思うのです。
忘れ去られる前に、心で語り継ぐということ
「大衆文化は語り継がなければ忘れられる運命にあります」という言葉も、私たちの心に問いかけます。どれほど多くの人に愛され、感動を与えたものでも、記録されなければ、いつか消え去ってしまう。それは、日本の人文学にとって「大いなる損失」である、と。
私たちは、日々の忙しさの中で、感動したことや心に残った出来事を、ついつい忘れてしまいがちです。けれど、もしも「これは残しておきたい」「語り継ぎたい」と思うものがあれば、それはもしかしたら、あなた自身の人生にとって、何よりも大切な「生きる意味」に繋がるヒントなのかもしれません。
かつて誰かの心を揺さぶり、多くの人々の日常を彩った大衆文化の数々。それらに改めて光を当てる「ケロリンBOOKS」の試みは、私たち自身の記憶の扉をそっと開いてくれるように感じます。それは、ただ昔を懐かしむこと以上の、深い意味を持つはずです。過去の文化を通して、今の自分を理解し、そして未来へと繋がる「生きる」喜びを再発見する。そんな、ささやかな、けれどかけがえのない旅を、あなたも始めてみませんか?
日常の中にこそ、私たちの心を豊かにする輝きは満ち溢れています。その光を見つけ出し、愛おしむこと。それが、きっと「生きる」ということの、ひとつの答えなのでしょう。
心に灯をともす、今日の一冊
今回ご紹介したいのは、イタリア文学研究者として活躍された須賀敦子さんのエッセイ集『世俗の喜び』です。
大衆文化そのものをテーマにした本ではありませんが、須賀さんの文章には、イタリアでの日々の暮らしの中で出会う人々、街並み、そして些細な出来事の中に、人生の奥深さや喜びを見出す温かいまなざしが溢れています。時にささやかで、時に苦しい「世俗の喜び」を、透明感のある筆致で綴るその姿は、まさに今回お話しした「日常の中に隠された生きるよすが」を見つけることと重なります。
忘れ去られがちな日常の風景や人々の営みに、これほどまでに深い愛と敬意を注ぐことができるのか、と読むたびに心を揺さぶられます。私たちもまた、自分の身の回りの、当たり前すぎて見過ごしてしまいそうな「偏愛」の対象や「ささやかな喜び」に、改めて目を向けてみませんか。この一冊が、あなたの心にも温かな光を灯してくれることを願っています。
引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000175687.html

