バンドを解散して、言葉を書いて、愛媛に帰った。そして、農業を継いだ。
高橋久美子さんといえば、チャットモンチーのドラマーとして知られる。2000年代の邦楽シーンを席巻したあのバンドの、力強いドラムと、独特のしなやかな存在感。でも今の高橋さんは、詩人であり、作家であり、そして農家でもある。
『わたしの農継ぎ』(ミシマ社)は、そんな高橋久美子さんが故郷・愛媛で農業を継ぐことになった日々を綴った実録エッセイだ。
著者・高橋久美子さんについて
1982年、愛媛県生まれ。チャットモンチーのドラマーとして活躍した後、詩人・作家・作詞家として活動を続けている。詩集『今夜凄い嵐の中で』(ナナロク社)をはじめ、エッセイ集『旅を栖とす』(大和書房)など、言葉の一粒ひとつぶが丁寧に選ばれた作品を世に送り出してきた作家だ。
2018年にチャットモンチーが解散してから、高橋さんの表現の場はステージから紙の上へと移っていった。そしてある時期から、故郷・愛媛との距離がぐっと縮まっていく。
『わたしの農継ぎ』ってどんな本?
高橋さんの実家は愛媛の農家。年老いた親が守ってきた畑を、次の世代がどう引き受けるか——それが「農継ぎ」だ。農業の後継ぎ問題は今、日本全国で深刻化している。でも、この本が描くのは社会問題としての農業ではない。
もっと個人的で、もっと体に近い話だ。
土を耕す感触。季節の移ろいに自分の体を合わせていくこと。親の手が育ててきた木に、自分の手を重ねること。食べることと生きることが、じわじわと地続きになっていくこと。
高橋さんの文章は詩人のそれで、農業の現場を切り取りながら、読む人の胸の奥にある「根っこ」を静かに揺らしてくる。ドラムを叩いていたあの頃と同じリズムで、この本は書かれている気がする。
読んでほしい3つのポイント
① 詩人の目が捉えた「農」の美しさ
高橋さんの文章は、農作業の泥臭い現実すら詩になる。土の匂い、作物の重さ、空の色——ページをめくるたびに、愛媛の風が吹いてくるような感覚がある。農業を「知識」として読む本ではなく、農業を「感覚」として体に入れる本だ。
② 家族と土地との向き合い方
親が作ってきたものを継ぐとはどういうことか。愛情と葛藤、誇りと戸惑い。「帰る場所がある」ことの意味を、高橋さんは逃げずに書いている。家族や故郷という言葉に複雑な気持ちを持つ人ほど、刺さるはずだ。
③「どこで生きるか」を問い直す一冊
都市と地方、バンドと農業、表現と労働——二項対立ではなく、その間を自分のペースで生きることの話。何かを手放して何かを選んだ人、あるいは今まさに迷っている人に、そっと差し出したくなる本だ。
こんな人に届けたい
- チャットモンチーが好きだった人(あの頃から、こんな場所に来た)
- 高橋久美子さんの詩・エッセイのファン
- 地方移住・Uターンを考えている、または迷っている人
- 農業・食・土に興味がある人
- 親の老いと向き合い始めた人
- 「自分はどこで、どう生きるべきか」という問いを持っている人
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本というのは、手に持つとまた違う重さがある。高橋久美子さんの言葉はとくにそうで、画面で読むのとページをめくるのとでは、届き方が変わってくる。
気になった方は、ぜひのこのこ書店の在庫をチェックしてみてください。あなたにとっての「農継ぎ」を、この一冊が少し手繰り寄せてくれるかもしれない。
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